AKB48の1期生として13歳でデビューし、トップアイドルとして華々しいキャリアを歩み、卒業後の今はバラエティ番組や舞台などで活躍している峯岸さん。 順風満帆に見えるが、「何事も後ろ向きに捉える人間なので…」と笑う。 もっとかわいければ。スタイルがよければ。愛嬌があれば。秀でた才能があれば。 「何もない」自分を恨んだことも何度もあったと言う。 「今なら、ネガティブをさらけ出せる気がした」 「こういう自分も悪くないなと思えるようになってきた」 30歳を迎える今、大事に作り上げてきたこの本に込めた思いを聞いた。

無理してキラキラしない

――テレビで見る峯岸さんの奥にある、ネガティブな姿も包み隠さず見せているのがこの本の魅力だなと思いました。 最初にスタイルブックのお話をいただいた時は、「私には無理だと思います…」とお返事したんですよね。 「おしゃれなファッションとかメイクとか、みんなの勉強になるような美容の知識とかは、多分発信できないと思います」と。そんなキラキラした人間でもないし。 でも、編集さんが「そういう峯岸さんだからこそ、共感してくれる女性がたくさんいると思います」と言ってくださって。無理してキラキラしない、背伸びしない、というのは意識して作りました。 そうなんです、もうそういう感じでいいや〜って(笑) 正直、もっと素敵な生活している感じに盛ろうと思えば盛れたと思うんですけど、それをしなかったことが結果よかったなと思います。 とはいえ、ネガティブキャラを押していこう!と最初から思っていたわけでもないです。本当に自分の伝えたいことを詰め込んでいったら全部「ネガティブ」が底にあるなと気付いた……って感じでしょうか。 はい。いろいろ案はあった中で、たくさん出した中のひとつが採用されました。 ――表舞台で活躍している方ですと、ネガティブな面をさらけ出すのは勇気も必要だったのでは? 「こういう自分も悪くないな」「嫌いじゃないな」と受け入れる余裕がちょっとできたからこそ、さらけ出せるタイミングだったかなとは思います。 私がようやくたどり着けた「ネガティブも悪くないんじゃない?」という気持ちを、多くの方とシェアできたのはうれしかったですね。 「共感しました」「救われました」という感想をたくさんもらえましたし、同じような誰かの心を少しでも軽くできたなら、この本を作ってよかったなぁと思いました。私もずっとネガティブとの付き合い方に迷ってきたので。 めちゃくちゃしますね。もう依存です、Twitter始めた頃からずっと。癖になっちゃっています。 めちゃくちゃ悪口言われてきましたよ。「ブス」とか「整形」とか「嫌い」とか「ウザい」とか……。 褒めてもらえるようになったのはこの数年、ほんとに最近だと思います。「おもしろい」「頑張ってる」「かわいい」って。 ――そうなんですか? 自分は何も変わってないつもりなんですけど、そんなに周りの見方変わるんだ? って不思議で。 エゴサして優しいコメントしか見当たらないと「え?マジ?」って逆にちょっと焦ります(笑) 「今こんなに褒められてたら、なんかのきっかけで絶対また叩かれる!」って不安になっちゃいますよ。 ――ネガティブ発動してますね。 そう、こうやって(笑) 悪口書かれても落ち込んでたし、めちゃくちゃ褒められてもちょっと卑屈になっちゃうし、この性格はずっとこのままだろうとは感じます。 ――エゴサやめようって思うこともありますか? やめようと思ってやめられるものじゃないなって思います。 「今日は1日忙しかったから、携帯触らなかったな」みたいな日がある、くらいです。そういう日を少しずつ増やしていければいいな〜と思ってます。 それは間違いないです。13歳でAKB48に入った時は自分のことめちゃくちゃイケてると思っていたんで。ダンスもできてかわいい!イケてる!って(笑) 同世代の女の子たちと横並びで日々活動していると、自分の立ち位置が否応なくわかってきちゃうんですよね。 生まれ持った素質の差は大きくて、自分ははじっこが定位置で、何をどう頑張ったらいいのかもわからない。それまで自惚れていたのもあって自信は粉々でしたし、どんどんネガティブになっていきました。 ――芸能界、特にアイドルグループは周りの女の子たちと比較されることも多いと思うのですが、やっぱりしんどかったことですか? しんどいときはそりゃあしんどいですけど――私の場合だとスキャンダルの後はしばらく真っ暗闇でしたけど――その分みんなができない経験をしているっていうのも本当なので。 ドーパミンがバァーッて出た記憶がずっと残っているのかもしれないです。 アイドル業やタレント業は、落ちるときはドン底まで落ちるかもしれないですけど、普通に生きていたら味わえないような幸せな経験もできますからね。 大きな会場で歓声を浴びたり、たくさんの人のまっすぐな愛を感じたり。 ありえないくらい嫌なことがあっても、ものすごく幸せなときもあったから。やめられなかったんだと思います。

「ずっとポジティブだったらこうなってなかった」

――「ボクらの時代」で高橋みなみさんが「みぃちゃんが今幸せそうでよかったよ、本当に」としみじみ話されていて、それは峯岸さんを側で見守ってきた方やファンの皆さん、みんなの気持ちだろうなぁと思いました。 今振り返ると、ネガティブだったからこそ感じた感情や生み出せる表現もあったと思うんです。ずっとポジティブだったら私はこうなってなかったですもん、絶対。 ――タレント以外の仕事をしていた自分、も想像つきますか? 全然つきます。昔から何か他の仕事を本気で探していたら、今も芸能界にいることはなかっただろうなぁ。 中1からやってきただけで他にできることがないって感じです、今も。天職、だとは思わないですね。 後ろ向きだったり、卑屈だったり、悩みがちだったりする人が受け入れられている、居場所がある時代になってきたんじゃないかなぁと思うんですよね。 なんというか、昔に比べて「カリスマだけが芸能人じゃないよ」って空気……ありませんか? 例えばお笑いコンビがいたら、昔は明るくて目立つ人こそスター!と感じてたけど、今はザ・陽キャ!じゃない人……いわゆる「じゃないほう芸人」的な人が光を放ったり、共感を持たれたりしていると思うんですよね。これは芸能界だけじゃないかもしれないですけど。 ようやく「長所ネガティブ」とも言ってもいいかな、という気分になってきた。自分を受け入れて、マイペースに楽しくやっていこうと今思えている気がします。

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